« 春は待ち遠しいが、冬の寒さも名残惜しい | メイン | ずぶねりです、どうぞよろしく »

2005年03月27日

ダラダラ

先日、中古で民生のCD(FAILBOX/'97)を買った。そのライナーの渋谷陽一の文章にいたく共感する、っつうか先に書かれていてくやしい。「渋谷ももう終わってるよな」なんて普段馬鹿にしててゴメン。ロッキンオンはしょうもない雑誌になっちゃったけど、さすがロックの伝道師、ちゃんとわかってらっしゃる。せっかくだからわしが転載してやる。もちろん転載許可などとっておらぬぞ。おかげでこちとら仕事がおわんねーや。
--------(以下転載)
 何故、ソロになってからの奥田民生はダラダラしているのか。それはロックだからである。日本のロック・シーンでは何だか元気一杯なものがロックだと誤解されているようだが、ロックはビートルズ、ストーンズの時代からダラダラしているものだったのだ。日本で売れているロックと称されるもののほとんどが、集団で駆け足行進しているみなたいな体育会系のビートを持っているが、あれはロックのビートではない。洋楽ロックの評論家を25年続けている僕が言うのだから間違いない。しかし、このロックのビートは頭で理解して叩き出そうとしてもできるものではない。体がちゃんとダラダラしないとビートもちゃんとダラダラしないのだ。ちゃんとダラダラというのも変な表現だが、それはとても大切な事なのである。
 では、何故にロックはダラダラしているのだろう。一般には攻撃的でエネルギーに満ちていると思われるロックだから、ダラダラという表現は似合わないような気がする。でもロックはエネルギーに満ちて攻撃的でダラダラした音楽なのである。ダラダラの原因は疲労感である。疲れるからダラダラするのだ。どうして疲れるかというと、思うように行かないからだ。人間、全てが思いどおり行けば疲れないし、元気一杯でいられる。ところが現実はほとんど思うようにはいかない。そこで疲れてしまう。僕らは多くの場合、現実のどうしようもなさに疲れ果てている。ところが中には、現実はどうにでもなると思っている頭の悪い奴が居て、変に元気だったりする。こういう人は自分で疲れない代わりに周りをやたら疲れさせるのである。貴方の周りにも居ませんか、意味もなく前向きで元気な人。(中略)
 さて、ダラダラとしたロックと書いて来たが、言うまでもなくただダラダラとしていればいいというわけではない。現実に対する疲労感を疲れた疲れたと嘆いているだけではロックにはならない。日本における演歌やフォークは、そうした疲労感をただ慰安する形で機能する音楽だが、ロックはそうではない。そういうニヒリズムとは反対に、もっと理想主義的なのだ。確かに現実は厳しいし疲れる事も多い。しかしそれと闘い、変えていかなければ何も始まらないと考える音楽なのである。だからダラダラしつつもエネルギーに満ちて攻撃的なのだ。厳しい現実に対する重い認識、そしてその現実と闘う強い意志、それが一体化するとダラダラ・ロックができあがる。どちらか一方が欠けても駄目なのだ。ところが、こうしたロックがロックとして成立している大前提が日本では余りちゃんと認識されていなかった。そこでロックではないロックもどきがロックと称して大量消費されることになってしまったのである。無論、ちゃんとダラダラしたロックも日本に少なからずあったのだが、市場からは変わったものとして扱われ余り売れなかった。だから民生のファースト・ソロが百万枚に迫るセールスを記録した時、日本の音楽マーケットに革命が起きたと思った。あのダラダラとしたヘヴィーなビートが百万人近くの人間に共有されたというのは、ひとつの事件であった。僕のように、いつか日本にもそんな時代が来ればいいのにと、20年以上待ち続けた者にとって、それは感動的な出来事だったのだ。その後、民生の日本国民総ダラダラ計画は、より強力なパフィーという兵器を生み出す事によって進行して行く。小室系の意味もなく元気なビートと、よく聞くとやたら説教臭い歌詞にうんざりしていた人間にとって、パフィーのダラダラした踊りと、なめきった歌詞は新鮮で痛快であった。偉い民生。(後略)
文:渋谷陽一(奥田民生「FAILBOX」ライナーノートより転載)
--------
「ロックに生きる」ことと「ダラダラ生きる」ことはわたくしの人生における永遠の2大テーマであり、すなわちそれらはイコールだ。偉い渋谷。
しかしこのアルバムから約8年経過した現在、「日本国民総ダラダラ計画」は残念ながら実現ならず、ちまたには説教臭くて前向きな音楽があふれ、「ロック=ダラダラ」もどっかに追いやられちゃってます。ここはそろそろわしらの出番かと…。

初めてトラックバックをいただく。
トラックバック返ししてみようと思うが、やり方を忘れしばらく途方にくれる。

投稿者 comy : 2005年03月27日 03:59

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.zubuneri.com/comyblog/mt-tb.cgi/120

このリストは、次のエントリーを参照しています: ダラダラ:

» ヒッカリコマタキワ―イワイ from ひねもす日記
よう云うたcomy。っていうか渋谷。 http://www.zubuneri.com/comyblog/archives/2005/03/post_99.ht... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年03月29日 23:57

コメント

コメントしてください




保存しますか?